たなべ未来創造塾
未来デザイン

たなべ未来創造塾 第3期 事業レポートReport

田辺市の新たなまちづくりとビジネスチャンス

2018年8月18日
日時 :平成30年8月18日(土)14:00〜17:00
会場 :シリコンバー(高垣工務店1階)

人口減少が進む中、田辺市では今後どのようなまちづくりを進めていくのか、その中でどこにビジネスチャンスがあるのかを探った。

また、今回の会場は二期生の石山氏(㈱高垣工務店)が新たに整備した、“仕事を生み出す”空間「シリコンバー」のこけら落としを兼ねて4日目の講義を開催した。

講義 田辺市の新たなまちづくりとビジネスチャンス

講師 田辺市長 真砂充敏
たなべ未来創造塾第三期開講式

チャンスとは誰が決めるのか。ピンチはどうしてチャンスなのか。チャンスはチャンスと言ってくれない。

市民の皆さんからは、子供たちに働く場所を作ってほしいという要望を聞く。企業を誘致することは簡単ではない。しかし、どんな職場を作ってほしいと思っているのか、その子供さんたちはどう働こうとしているのか、自分で起業する考えはないのだろうか――。こうした働き方を考えるのはこれからの大きなテーマである。

田辺市は、平成17年に5市町村が合併し、その際に策定した合併後10年間の新市建設計画に基づき、まちづくりを進めてきた。
そして、合併10周年を迎えるにあたり、具体的には合併10周年の2年前(平成25年頃)から次のまちづくりをどう進めていくかを考える大きな機会となり、地域資源やポテンシャルを見つめ、地域の価値や機運を高めていこうと平成26年に「たなべ営業室」を設置し、「価値創造プロジェクト」の取組を進めてきた。現在では「地方創生」という言葉をよく聞くが、田辺市では「地方創生」と叫ばれる以前からいち早く取組を始めてきた。

これに呼応するように、国体の開催や吉野熊野国立自然公園への拡大編入、世界農業遺産の認定、世界遺産登録10周年などが続き、さらに平成28年にはまちなかにある鬪雞神社が世界遺産に追加登録され、今や田辺市への外国人来訪者が大幅に増加する中、まちなかにおいて景観まちづくり刷新支援事業や新武道館の建設など、現在、様々な大型プロジェクトを進めている。
しかし、このような状況変化をチャンスと捉えてチャレンジする地域の人がいないと魅力的なまちづくりにはならない。

魅力的で持続可能な地域づくりに向け、「価値創造プロジェクト」の中から地域課題とビジネスを結びつける「たなべ未来創造塾」を平成28年に創設した。こうした人材育成事業は、成果が出るまで長い時間がかかると思っていたが、修了生から既に多くの事例が生まれ、皆さんのスピード感には驚いている。
しかし、ピンチも抱えている。

人口減少の問題である。このままでは2060年には約4万人にまで減少してしまうと予測されている。人口減少への対応には、定住人口を増やす、流出を食い止める、子供を産んでもらうということしかない。この人口減少が地域課題の根幹であり、ここから派生して多くの課題が生じている。
一方で、人口減少を一定程度受け入れながら、少ない人口でどのようにして豊かに生きるか。このことを真剣に考えなければならない。

移住者、定住者を増やすということは、どこかの自治体の人口が減ることとなり、いわゆるゼロサムゲームとなってしまう。我が国の総人口が減っていく状況にある中、“交流人口”、“関係人口”をどう考えるかということが重要となる。観光だけでなく、スポーツや芸術、文化などを通じて、人が交流すること、さらに他の地域に住んでいても田辺市を応援する人を増やしていく必要がある。“交流人口”、“関係人口”は日本人だけが対象ではなく、当地には実際多くの外国人が来訪しており、世界にも目を向ければ無限の可能性が広がる。

まちづくりでは、南海トラフや台風など災害への対応も重要な課題となっている。有事の際、司令塔となる新庁舎の建設に真正面から取組んできたところであり、オーシティの場所に移転することで進めている。
庁舎が移転すると中心市街地がさびれるのではないかとよく言われる。中心市街地内に庁舎を再建するわけで、具体的に考えると、何が寂れる原因なのだろうか。ピンチと捉えるのではなく、考え方次第でチャンスと捉えることができるのではないだろうか。
また、庁舎が移転した際の跡地利用については、民間投資を促しながら地域経済を活性化させる方法がないのか検討していく必要がある。文里湾横断道路の建設についても具体的な検討が進んでおり、実現すれば白浜との一体感が増す。

そうなると南紀白浜空港の利活用も重要となる。こちらは民営化に向けた準備が進んでおり、運営事業者は国内及び海外空港とのチャーター便も視野に入れている。
当地域は、関西国際空港からはわずか1時間余りで来れ、東京までも1時間余りで行ける。高速道路についても約3年後には印南まで4車線となる。世界的な視点で見ると、我々が思っている以上に便利な地域と言える。

我々の地域がいかに恵まれているか。
チャンスと捉えるかピンチと捉えるか。
ボールを振らずにストライクを振る。ストライクを見逃さない。チャンスは無言で通りすぎる。
皆さんがそれぞれどう考えるか。皆さんがやること、行動することが大切だと思う。
皆さんの行動については、地域を挙げて応援したい。
先行き不透明という話をよく聞くが、そもそも先行きが透明な時代があったのだろうか。不透明なもの。先が見えない中にチャンスがあるのではないだろうか。

こうしたことを考えながら、皆さんそれぞれがどう答えを出すか。答えは皆さんの中にある。修了式では素晴らしいビジネスプランをプレゼンテーションしていただくことを期待している。

■質疑

市長と塾生とのあいだで約30分間、質疑が行われた。

ディスカッション
<テーマ>大型プロジェクトで地域はどう変わるか

たなべ営業室鍋屋主任から、大型プロジェクトの概要を補足説明したあと、3グループに分かれ、上記のテーマについて、グループワークを行った。

講義 中心市街地で起こる新たなイノベーション
講師 中村文雄(1期生)、横田圭亮(1期生)、淺賀由貴乃(2期生)、中山智文(2期生)
たなべ未来創造塾第三期開講式 来賓挨拶

中心市街地で新たなプロジェクトに取り組んでいる修了生の4名から、それぞれ10分間のプレゼンテーションが行われた。

Hoso back yard house-田辺に賑わいをもたらすエンゲージメントハウス-

中村文雄(1期生)、横田圭亮(1期生)

かつてない人口減少社会を迎える中、我が国の新築着工件数は2030年には今の4割にまで減少してしまうと予測される一方、空き家は2030年には今の2.2倍にまで増加する。

田辺市においては、空き家率が全国平均より5.4%高い18.9%となっており、中心市街地の人口減少、空き店舗の増加といった大きな地域課題を抱えている。

しかし、変化の兆しも見られ、田辺市は移住者が県内で最も多く、外国人観光客が急増、さらに鬪雞神社が世界遺産に追加登録されるなど、追い風も見られている。

こうした中、熊野詣の宿場町として栄えたかつての賑わいを取り戻そうと、ゲストハウスを整備することで交流人口である観光客を受け入れ、またシェアハウスを整備することで定住人口である移住者や中心市街地外の住民を呼び込み、さらにカフェバーを併設することで、交流人口と定住人口、地域住民がエンゲージメントする拠点を作りたいと第1期修了式においてプレゼンテーションを行った。

その後、金融機関からの融資とクラウドファンディングにより資金を調達、ワークショップを開催するなど、プロセスから多くの方々に関わっていただきながらtheCUE(ザ・キュー)を作り上げた。
 また、同じく1期生で鳥獣害対策に取り組むチームHINATAの取組に感銘を受け、同じく1期生のイタリアンシェフによる料理監修のもと、ジビエ料理を開発・提供しており、中でもジビエバーガーは2期生のパン店とも連携するなど、多くの人が関わりながら生まれた商品である。

田辺を好きになるパン屋「焼きたてぱんD’oh!」

淺賀由貴乃(2期生)

 日中はパン屋で働き、夜は留学経験を生かし、学習塾の英語講師を務めていた。

こうした中、英語での仕事のオファーを受け、九州に就職する予定でいたが、なんとなくたなべ未来創造塾に参加し、講義を重ねるうちに塾生のみんなのことが好きになり、みんなのことを田辺の人にも知ってもらいたいと考えるようになっていった。

すると、勤務先のパン屋が店を閉めることとなり、自らが商店街の空き店舗でパン屋を開く決断をし、今年2月にオープンした。

〈取組①〉「地域コラボぱん」
2期生のみかん農家とコラボし、「季節のみかんぱん」を提供するなど、生産者の顔写真や思いをあわせて伝える。

〈取組②〉地元に愛されるお店づくり
似顔絵コーナーや子供は無料のドリンクバーを用意するなど子供たちがワクワクするお店に。

〈取組③〉英語を生かし、外国人観光客にやさしいお店づくり
 留学体験を生かし心のこもった英語対応とメニューの英語表記により外国人観光客が田辺を訪れる目的の一つに。

こうした取組を通じて、結果的にシャッター通りや若者離れ、外国人観光客の立ち寄れる場所が少ないといった地域課題の解決にも少しは貢献できているかもしれない。

yuriisu project-中心市街地の空き店舗に「遊べるギャラリー」を作る

中山智文(2期生)

田辺市の中心市街地では、人口減少や高齢化が進み、空き店舗が増加するといった地域課題を抱えている。

一方、自社としては、住宅着工件数の減少に伴い本業であるCGパースが需要減、ネットや量販店の安価な家具の流通に伴うオーダーメイド家具の需要減などの課題を抱えている。

こうした中、地域課題と自社の課題を解決するために、空き店舗に職人やクリエイターが集まる「遊べるギャラリー」を作ることにした。

CGパースの事務所に加え、家具製作や小物製作及びギャラリー、修了生とコラボしたワークショップの開催などを通じて人が集まり、出会い、会話が起こり、人やモノ、仕事が循環していく拠点にしたい。

現在は、南新町に事務所を借り、改修中である。