たなべ未来創造塾-地域から必要とされる新たな仕事を創りだす-
未来デザイン

たなべ未来創造塾 第5期 事業レポートReport

5日目「超高齢社会ビジネスの可能性」

2020年10月10日
日時 :令和2年10月10日(土)13:30~16:30
会場 :田辺市役所 3階 第一会議室

田辺市における地域課題の重要な視点の一つである「高齢化」をテーマに、地域はどのように変化するのか、どこにビジネスチャンスがあるのかを探った。

講義 「超高齢社会ビジネスの可能性~地域包括ケア時代の生活支援サービス市場~」

講師 :三菱UFJリサーチ&コンサルティング 共生・社会政策部長 主席研究員 岩名礼介氏
超高齢社会ビジネスの可能性

地域包括ケアへの理解が深まると、介護の世界以外にも民間にたくさんのビジネスチャンスがあるということに気付いていただけるのではないかと思っている。

逆にいうと自治体の介護担当、高齢者担当の皆さんは、どうすれば介護以外の民間の人たちと連携し、イノベーションが起こせるのか悩んでいる。

「あなたの知っているおじいちゃん、おばあちゃんをイメージしてほしい。」
 そんな問いかけから講義がスタートした。

国よっても、場所によっても、世代によっても、地域によってもお年寄りのイメージや嗜好などは大きく異なる。実は若い世代のイメージは案外古い高齢者のイメージで固定化されていることも多い。
今後の高齢者は、バブル経済の中で20代を過ごしている世代であり、「高齢者」といっても、ひと昔前とは趣味嗜好も違うし、一律のイメージがあるわけではない。

地域の高齢者の集いの場や生活を支える多様なサービスも、そのニーズが多様化していく、つまり「多品種少量生産」的な発想が必要な時代を迎えているといえる。
介護保険の認定率を見ると、60~70歳代は、認定される割合がさほど多くない。80歳代半ばにさしかかると認定率が50%程度になり、生活上、何らかのサポートが必要となってくる。
一番の人口のボリュームゾーンである「団塊の世代」がまもなく後期高齢者に入る。
この「団塊の世代」が、今後10年以内には80代半ばとなり、自立した生活をしつつも「ちょっとだけできない」ことを抱える高齢者が爆発的に増える。2040年には85歳以上が10%近くを占める時代を迎える。

単身世帯の増加、生涯未婚率の上昇など、これからは家族の介護力を期待できない時代だ。非正規雇用の増加が定着して久しいが、そのことで今後の高齢者の所得格差も拡大していく。つまり、多様性と格差の時代が到来するのである。
高齢者の生活上の困りごとは、重い荷物を動かしたり、ゴミ出しといった些細なことも多く、こうした小さなニーズに「なんでも介護保険で」という形でサービスを提供していくことは難しい。とりわけ全国統一の仕組みである介護保険で、それぞれの地域に沿ったサービスをデザインするのには限界がある。

したがって、日常的な生活の支援は介護保険だけで支援するのではなく、いろんな地域資源を組み合わせる必要があり、介護保険は基本的には専門職でなければできないことに収斂していく流れにある。こうした傾向は、単に人材不足や財政の持続可能性の観点からだけ求められているわけではない。そもそも人の生活は多様であり、範囲が限定された専門職サービス(介護保険)だけでは、多様なニーズに応えられないということも背景にある。

「多品種少量生産」といった考え方がでてくるのはそのためである。狭いマーケットに対し、いかにディープに入っていくかが必要だ。
そのため、地域において多様なバックグラウンドを持つ関係者が「まじわる」ことが大切なのである。たなべ未来創造塾は、まさに「まじわる」ことで化学変化が起き、多品種少量生産が実現しつつあると感じている。

全てを介護保険で支援するのではなく、小さな支援を必要とする部分をみんなでどう支えていくか。このことが自分らしい暮らしを維持できることにつながる。そこには、民間の柔軟なサービスが大変重要である。

こうした「ちょっとした困りごと」への対応は、住民主体やボランティアで対応する動きもある一方、民間事業者が、買い物支援や手続き代行など、ちょっとした関わりを通じて、人間関係を構築し、本業の収益向上につなげているビジネス事例も見られる。ひとつひとつの生活支援サービスはビジネス化できなくても、そうした小さなサポートを契機に、新しい顧客とのつながりを開拓していくという視点も大切だ。

これまで、なんでも介護保険という形で制度が設計されてきたが、介護保険の外にニーズが相当ある。その中身は、地域によっても大きく異なる。だからこそ、自治体の役割も、国の制度を実施するという発想ではなく、地域で考える場の創出を支援する役割に変化しつつある。

これまで自治体は、住民に計画案・方針等を提示し、住民は自治体に取り組みへの協力、もしくは要望を行う承認のプロセスが中心であった。しかし、これからは自治体が「場」を設置し、住民はその「場」に参加し、自らが考えることでいろんな化学反応が起きるオープンイノベーションが必要とされている。

まさに、たなべ未来創造塾ではこうした「場」として機能しているのである。
 地域の中には、まだまだビジネスチャンスがたくさん転がっている。